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小さなナディア

前世界銀行副総裁、西水美恵子氏が、世界銀行の業務に携わる中で出会った国やリーダー達との思い出に関する連載を書籍にまとめたもの。
「よい国をつくる」「正しいことを正しく行う」ための奮闘の記録。

経済も、政治も、私が敬遠していた理由がわかった。
私利私欲、保身という「私が見たくないもの」にまみれた世界であるから。
でも、見たくないからと見なくても、存在することが真実。
目を背けるのかと無言で著者に問われる思い。
そして、そのただ中にあってよい国づくりをと情熱を燃やし続けるリーダー達、彼らと頭とハートでつながる著者に何も言葉が見つからない。

胸を打つ言葉を残しておきたい。

ブータン。
「国の財源には限度がある。物が足りなくても我らには幸せがある」

バングラデシュ。
「シスター、知識は良い人生を築く力だということ、忘れてはいけませんよ」

パキスタン。
「我が国の宿命を信じる。国民を信頼し、我が国の将来に確信を持つ」
最高指揮官不在のクーデター。
彼は知っていた。人間が人間として生きるための最低限の「安全保障」は、心身の健康と、胸に灯す希望なのだと。貧しさとは、この保障がないことだと。
「自分が正しいと信じる事は捨て身でやり通す。だから、人がついてくる。ムシャラフはそういう男だ」

「神は、無学でも自立心ある者に常識という英知を恵み給う」

インド。
「君らはみな同じ人間だ。神に与えられた自治自立精神を頼れ。政府に頼りっきりの発展などこの世にはない」

大自然を慈しみ生きた人々の英知は、なぜ卑下され忘れられるのだろう。科学や、科学進歩、経済開発が、人間の傲慢と貪欲を煽ぐのか。いつになったら私たちは、その愚かさに目覚めるのだろう。

モルディブ。
リスク管理の姿勢とは、最悪の事態とその確率を想定し、力があるうちに自分のことは自分で処理できるよう先取りすること。

スリランカ。
「平和は静的な結果ではない。民が心底参加できる動的な過程なのだ」
「自らの権力の糧として民を煽動した政治家が悪い。民を正すのが指導者の責任。それをせぬ政治家は、神職から悪魔の奴隷に堕落する」
「高度教育を受けた若者たちの正義感と情熱には素晴らしい力がある。時の指導者に聞く耳があれば、国づくりの大きな味方となる。(中略)ただ、我が国の権力者にはその耳がなかった。彼らの傲慢と無関心が、民の大切な宝を鬱憤と怒りに変えてしまった。負の破壊の道への扉を開けてしまったのだよ」
「ジャフナの子供の顔をよく見ておいで。若気の過ちを正す勇気を革命家に恵む薬。それは次世代の正義感と情熱なのだから。ミエコも僕も、その薬を促すことが仕事なのだから」
「人を殺めて勝ち取る富に幸せはない。我が子がそれを教えてくれた」

ネパール。
「我が国の政治家は、大きな過ちを犯している。国づくりの手段であるはずの政治を、目的に取り違えている・・・」

この書籍に出会って、初めて世界史の体温を感じた。
紛争、国家安全保障、平和、貧困……「日本がどれだけ恵まれているか」と諭されるよりも、この本を一冊無言で手渡される方がよっぽどそのことを理解できる。
英語を身につけ、世界史を始め広く様々を学びたい。そんな思いにも駆られる。

強調されるのは、国家と民の間の信頼。そして、援助に頼らない民の自主自立の精神。
お金は悪ではない、心を判じるもの。

世界の「貧しい」国々の草の根を書籍を通して著者と共に巡りながら、日本も先進的な「貧しい」国だと感じる。
心身の健康と胸に灯す希望……最低限のそれが、みな満たされているだろうか。

リーダーシップの定義や論はあまたある。
それは承知の上で、この本を読んで出てきたこと。
良心と夢を追い求める心の在り方が、リーダーシップ。

私の中のナディア……原体験は既にあるけれど、この本はその火に油を注いでくれる。
くじけそうになる時、一編でもまた読み直したい。

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